主催公演情報

 

サブカルコーラス・オーケストラコンサート情報解禁!

作曲家山下康介 コーラスとオーケストラの世界

2021年12月3日(金) 18:20開場 19:00開演

会場:なかのZERO 大ホール

前売券 5000円 / 当日券 5500円 / 学生券3000円

 

公演オフィシャルサイト

現代日本を代表する作曲家 山下康介「初の自作曲コンサート」

新生コーラスグループ・歌人三昧サマディと、オーケストラ・トリプティークのコラボレーションによる、スペシャルなコンサート!

ゲストにトロンボーン奏者の中川英二郎氏を迎え、これまで作曲したテレビドラマ「花より男子」メインテーマ、NHK連続テレビ小説「瞳」、アニメ「ちはやふる」、「Xenosaga The ANIMATION」、特撮ドラマ「海賊戦隊ゴーカイジャー」「仮面ライダーセイバー」、ゲーム「信長の野望」シリーズなどを新たなオーケストラ編曲で演奏、そして今回のために書き下ろした新曲も初演予定!

 

[指揮・作曲]山下康介

[出演]オーケストラ・トリプティーク(管弦楽) / 歌人三昧サマディ(コーラス)

[ゲスト]中川英二郎(トロンボーン)

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“公演特集コラム”

①映像音楽の旗手・山下康介が紡ぐオーケストラとコーラスによる25年の軌跡

 

映画やテレビドラマなど、映像作品にあって、“音”は欠かせない存在である。

台詞があり、効果音があり、そして音楽がある。

特にフィクションたるドラマにあっては音楽へかかるウエイトは大きい。

 

登場人物が織りなす悲喜こもごもの感情、舞台となる様々な場所、スリル、サスペンス、アクション――。映像作品における音楽は、あらゆる事象をスコアを通じて表現し、画と複雑に絡み合い、聴覚に訴えかける役割を担っている。例外もなくはないが、音楽のない映画やドラマなど、とうてい考えられないことだ。

 

そうした音楽は「映画音楽」と書けば分かりやすいが、広義に捉え、劇の伴奏を略した「劇伴」といった言葉で表されることが多い。或いは「BGM」(background music)、その訳語である「背景音楽」、はたまた「付随音楽」、「付帯音楽」、「劇音楽」、フィルムの音楽を記録する箇所を意味する言葉から転じた「サウンドトラック」と呼称されることもある。

 

作曲家・山下康介氏は、デビュー以来、劇伴音楽を中心に精力的に活動を行ってきた作曲家のひとりである。流れるように美しいメロディライン、卓越したアレンジ力に基づくオーケストラサウンドを基調に多くのファンを魅了し続けている。

 

1974年静岡県に生まれた山下は、中学生の頃に吹奏楽を通じて作曲への興味が芽生え、オーケストラ作品を自在に書ける作曲家を志すようになったという。やがて、東京音楽大学の作曲専攻(映画・放送音楽コース)へと進み、羽田健太郎に師事。卒業後にプロの作曲家として活動を開始するや、若くして映画監督の大林宣彦に見出され、それまでの久石譲に代わって、晩年まで音楽面で大林映画を支え続けた。また同じ頃に、菅野よう子の後を継ぐ形で光栄の歴史シミュレーションゲーム「信長の野望シリーズ」にも抜擢されている。以後、NHK連続テレビ小説『瞳』、ドラマ『花より男子』、アニメ『ちはやふる』、特撮作品『海賊戦隊ゴーカイジャー』、『仮面ライダーセイバー』といった数々の作品を手掛けた他、『題名のない音楽会』のアレンジャーやミュージカルの音楽監督としても活躍。また映像分野に限らず、吹奏楽や合唱曲、オーケストラ作品を発表するなど、多彩な活動を見せている。

 

その山下の作曲家としての25年の軌跡を凝縮したのが、このほど開催される「作曲家 山下康介コーラスとオーケストラの世界」である。本公演は山下の仕事の中から大きな比重を占めているTVドラマ、アニメ、特撮作品、ゲームの4つのジャンルで構成されている。

 

まず、TVドラマからは2作品。NHK連続テレビ小説『瞳』は、ダンサーを目指して上京したヒロイン・一本木瞳が里子と向き合う家族再生の物語。山下はこの作品のためにソロ楽器としては珍しいトロンボーンをフィーチャーしたメインテーマを書き下ろしている。山下がこのテーマを閃いた際に頭の中で鳴っていたのがトップクラスのトロンボーン奏者・中川英二郎の演奏であった。今回はテレビで流れたメインテーマと同じく、中川英二郎によって演奏されるというから楽しみだ。また井上真央と松本潤らが出演したドラマ『花より男子』は神尾葉子の少女漫画のドラマ化で、続編、映画化とヒットし、山下自身「転機となった作品」と語る代表作のひとつである。

 

アニメショーン作品からは、かるたを題材にした『ちはやふる』。本作は2011~19年にかけて3シリーズが製作され、そのいずれもが山下が劇伴を担当しており、ある種ライフワークとなりつつある。メインテーマで聴かれる短いモチーフが印象的で、本作の劇伴では、これが様々にアレンジされて盛り込まれ、作品として一貫したトーンを貫いている。

 

そして、特撮作品もまた山下にとって重要なジャンルである。スーパー戦隊シリーズには、チームの一員として参加した『爆竜戦隊アバレンジャー』を皮切りに、単独では『魔法戦隊マジレンジャー』から『宇宙戦隊キュウレンジャー』まで、4度起用されているが、今回はその中から、シリーズ35作目のアニバーサリー作品『海賊戦隊ゴーカイジャー』の楽曲をセレクト。2021年には続編『テン・ゴーカイジャー』が公開されるなど、高い支持を集める作品であり、放送当時には『題名のない音楽会』でも本作の音楽が取り上げられたことがある。そして、『仮面ライダーセイバー』は、テレビシリーズの放送を終えて間もない直近の作品で、冬には映画、さらに翌年には続編となるVシネマも予定されるなど、まだまだ“旬”の作品と言える。今回の演奏曲目では、テレビシリーズ終盤、第45話のクライマックスを盛り上げた、歌人三昧サマディによる挿入歌「Timeless Story」も注目の一曲だ。楽曲は劇伴のメインテーマを歌にアレンジしたもので、山下は「歌が入って初めてこの曲の完成形を見たような気がした」と、自信のほどをうかがわせている。

 

4つめのジャンルとなるゲーム音楽からは、第7作『将星録』~第13作『天道』を手掛けた「信長の野望」。シリーズ累計1000万本を超えるというから、山下の作品中、もっとも多くの人の耳に触れている作品かもしれない。また、ファミコン時代の『ドラクエ』育ちでもある山下にとって、ゲーム音楽はひとかたならぬ愛着と思い入れがあり、彼の仕事を振り返る上でも欠かせないものがある。

 

通常、スタジオで名だたるミュージシャンを集めて、一気呵成に録音されていく劇伴音楽。それらは作品を通じて、または録音物として我々の耳に届くが、ホールで生演奏される機会は極めて稀である。今回は山下自らが選曲をし、新たなアレンジを施した最新バージョンであり、さらには、この日が初演となるオリジナル作品も予定されているという。

 

山下がこれまでに紡いできた名曲の数々が、オーケストラとコーラスによって、いかに奏でられ、いかにホールに響き渡るのか。

そして、まだ見ぬ山下の音楽世界とは――。

それら全てがもたらす感動や興奮は、観客のみが味わえる特権だ。

 

文章:トヨタトモヒサ/フリーライター&映像音楽愛好家

 

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 ②山下康介コンサートによせて Text by 腹巻猫(劇伴倶楽部) 

 山下康介さんと初めてお会いしたのは『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003)の音楽録音の現場だった。山下さんは羽田健太郎率いる作曲家チーム「ヘルシーウィングス」に参加していたのだ。当時、山下さんはまだ20代! 新進気鋭の作曲家という風情だった(とはいえ、大林映画等ですでに映像音楽の作曲家として実績があった)。

 

以来、『魔法戦隊マジレンジャー』『海賊戦隊ゴーカイジャー』、アニメ『ガラスの艦隊』『デジモン クロスウォーズ』などのサウンドトラック・アルバムの制作で山下さんとご一緒する機会があった。また、アニメ音楽やゲーム音楽のコンサートに行くとアレンジが山下さんということもたびたびあった。山下さんの音楽の魅力は圧倒的なオーケストレーションのうまさ。そして、本人の人柄のようにやさしく、親しみやすいメロディ。そのサウンドに魅せられて作品を追いかけ、サントラを聴いてきた。

そんな山下さんの個展コンサートが開催される。映画・ドラマ・アニメ・ゲームの音楽が好きな方ならぜひ聴いてほしいプログラムだ。

以下、私が知っている山下康介さんの仕事とエピソードを紹介しつつ、本コンサートの聴きどころをご案内したい。

 

※本文ではコンサートで演奏されない曲についても触れています。

 

●山下康介の音楽家人生を変えた3

山下康介は伝説的なエピソードを持っている人である。中でも、すぎやまこういち、羽田健太郎、大林宣彦の3人との関わりは、山下康介の音楽人生を語る上で欠かせない。

 

幼い頃からピアノを習っていた山下康介は中学生になって吹奏楽部に参加。そこでアンサンブルの楽しさを知り、独学で曲を作り始めた。高校に進学し、将来の進路を考えた山下は音楽の道を志す。自分の書いたものの評価が知りたいと思い、自作の曲に手紙を添えて『ドラゴンクエスト』の作曲家・すぎやまこういちの事務所に送ってみた。当時、山下はすぎやまとは一面識もなかったが、数日後すぎやまから直々に電話がかかってきた。すぎやまは山下の曲に対する好意的な批評を伝えるとともに「きちんと勉強して楽譜が書けるようになりなさい」と励ましてくれたという。

 

そこから山下は猛勉強して東京音楽大学に進学。東京音大で師事したのが羽田健太郎、ハネケンである。山下のスコアは在学中から評価が高く、海外から講師を招いて指導してもらっていたとき、ある外国人講師が山下のスコアを見て「Excellent!」と叫んだという逸話がある。羽田も山下の才能を認め、自分のコンサートの1曲のアレンジをまかせた。これが山下のプロ音楽家デビューになった。羽田はのちに『爆竜戦隊アバレンジャー』の音楽担当を引き受けたとき、共同で作編曲にあたる作曲家チームの一員に山下を加える。この経験も山下が大きく飛躍するきっかけになった。

 

山下にとって運命的な出逢いとなったのが大林宣彦監督との仕事だった。1996年、テレビ映画『三毛猫ホームズの推理』(のちに劇場公開された)を作るにあたって、大林組の新しい音楽メンバーに選ばれたのが山下だったのだ。大林は山下を「天才少年」と呼んで可愛がり、遺作となった『海辺の映画館キネマの玉手箱』(2020)までともに仕事をした。多くの作品で山下の名は「學草太郎」と並んでクレジットされている。學草太郎は大林監督が作曲をするときのペンネーム。2人は二人三脚のようにコンビで映画音楽を作っていった。今回のコンサートに大林映画の曲は含まれていないが、いつか、山下康介の映画音楽を集めたコンサートを聴いてみたいと思う。

 

●出世作となった「信長の野望」

コーエーのゲーム「信長の野望」シリーズは山下康介の出世作と呼べる作品だ。山下が最初に手がけた「信長の野望・将星録」は1996年発売。プロとしてのキャリアの最初期にあたる仕事である。それまでシリーズの音楽を担当していた菅野よう子のあとを継いでの参加だった。菅野よう子の音楽が好評だっただけに重責を担う形になったが、山下はみごとに期待にこたえ、以降、「烈風伝」(1998)、「嵐世記」(2000)、「蒼天録」(2002)、「天下創世」(2003)、「革新」(2005)、「天道」(2009)と合計7作を担当。2014年に横浜で開催された「信長の野望」30周年記念コンサートでは山下が編曲と指揮を務めた(演奏は神奈川フィルハーモニー管弦楽団)。山下にとってゲーム音楽は、音楽家になるきっかけを与えてくれた恩人すぎやまこういちの想いを継ぐ仕事なのではないだろうか。

 

 

 

●特撮音楽での飛躍

 

山下が『爆竜戦隊アバレンジャー』の2年後に手がけたのが『魔法戦隊マジレンジャー』(2005)。初めて単独で担当する特撮ドラマだった。その音楽を聴いたとき、「これはすごいなぁ」と思ったものだ。映画「ハリー・ポッター」シリーズのジョン・ウィリアムズの音楽にも負けない、華麗でファンタジックな音楽だったのである。当時、山下は30代になったばかり。大編成のオーケストラを使った音楽を一度に6080曲も書かなければいけないスーパー戦隊シリーズでは、実績のある中堅~ベテランクラスの作曲家が選ばれるのが通例だったが、山下が最年少記録を打ち立てた。

 

山下がふたたびスーパー戦隊シリーズの音楽を手がけたのが今回演奏される『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011)。スーパー戦隊シリーズ第35作記念作品であり、劇中でゴーカイジャーが過去のスーパー戦隊の姿に変身して戦う趣向が盛り込まれていた。そこで山下は海賊戦隊のテーマとは別に、過去のスーパー戦隊を象徴する「レジェンド戦隊のテーマ」を作曲。実に35作分のヒーローの歴史が音楽に凝縮されているのである。もう1つの柱となる海賊戦隊のテーマでは特徴的なリズムを採り入れて海賊の力強さ、豪快さを表現した。

 

その後、山下は2012年に映画『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』と『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』で特撮ヒーロー音楽のレジェンド・渡辺宙明と連名で音楽を担当する記念碑的な仕事を経験。『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(2015)、『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017)とコンスタントにスーパー戦隊シリーズの音楽を担当することになる。

 

いっぽう東映のもう一つの代表的な特撮ドラマである仮面ライダーシリーズには『仮面ライダー鎧武/ガイム』(2013)で初参加。戦国武将をモチーフとしたヒーローはゲーム『信長の野望』とも通じるところがあるのが興味深い。次に担当した『仮面ライダーセイバー』(2020)は本の中の世界が戦いの舞台になる異色の設定。山下は「異次元的な民族調のサウンド」で特徴を出そうとしたと語る。今回のコンサートで演奏される「Timeless Story」はもともとメインテーマとして作られたメロディにあとから歌詞を付けた挿入歌。物語のクライマックスを大いに盛り上げた。オリジナル歌手の歌人三昧サマディの歌で聴けるのがファンにはたまらない。

 

 

 

●その名を全国に広めたドラマ音楽

 

2005年放送の『花より男子』は人気少女漫画原作のドラマ。山下の名を一般のドラマファンにも認知させることになったヒット作だ。井上真央が逆境に負けない勝気なヒロインを演じ、松本潤、小栗旬といった人気若手俳優が共演して話題を集めた。メインテーマがすばらしい。華やかでゴージャスでロマンティック。往年のミュージカル映画のようなワクワク感にあふれた曲調で魅了する。本作はパート2、映画版まで作られる人気作になり、そのすべてを山下の音楽が彩った。コンサートで盛り上がること間違いなしの曲である。

 

『花より男子』があまりによかったためか、山下の仕事に少女漫画や少女が活躍する漫画原作のドラマが多くなった。『鉄板少女アカネ!!(2006)、『有閑倶楽部』(2007)、『ヤマトナデシコ七変化』(2010)などなど。どれも山下の魅力的なメロディとオーケストレーションの冴えが堪能できる作品で大いに楽しませてもらった。

 

連続テレビ小説『瞳』(2008)NHKで放送された、いわゆる「朝ドラ」の1作。近年の朝ドラはオープニングに歌が流れることが多いが、本作では歌のないインストゥルメンタルがオープニングを飾る。昭和時代の朝ドラの伝統が受け継がれているようでうれしくなる曲だ。榮倉奈々演じるヒロインはヒップホップダンサーをめざしてがんばっているが、ひょんなことから3人の里子の親代わりになって奮闘することになる。山下はメインテーマのメロディを演奏する楽器にトロンボーンを選んだ。トロンボーンのスライドの動きがダンスにも通じるし、温かさや力強さの面からもマッチしていると考えたそうだ。朝のイメージにどうかという意見もあったが、最終的にスタッフに中川英二郎の演奏を生で聴いてもらい、山下の想いが実現した。コンサートでは、オリジナルプレーヤーである中川英二郎の演奏で聴くことができる。

 

●アニメ音楽の収穫

 

テレビアニメ『Xenosaga THE ANIMATION(2005)は山下康介のアニメ音楽デビュー作である。原作はナムコが発売したRPGXenosaga(ゼノサーガ)」シリーズ。40世紀を舞台にした宇宙SFだ。山下は音楽を担当するにあたり本格的にゲームに目を通し、SFアニメの名作『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』などに通じるものを感じたという。宇宙SFにふさわしいスケールの大きな音楽が魅力だが、メロディにもこだわった。本作ではオープニングテーマとエンディングテーマも山下が手がけている。オープニングは壮大なストーリーと劇中に登場する民族・宗教のイメージを盛り込んだ曲に、エンディングテーマは生命や精神をイメージし、シンプルな中に魂を感じさせる曲に仕上げた。特に英語詞で歌われるエンディングテーマ「in this serenity」(歌・五條真由美)は、山下のメロディメーカーとしての才能を感じさせるリリカルな名曲である。

 

Xenosaga THE ANIMATION』のあと、山下は同じく宇宙を舞台にしたSFアニメ『ガラスの艦隊』の音楽を担当。クラシック音楽を意識し、本物のパイプオルガンまで使った迫力のオーケストラサウンドが映像に華を添えた。さらに2009年には映画『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』に参加。旧作の音楽を担当した宮川泰、羽田健太郎が亡くなったあとの作品で、劇中には2人の楽曲の隙間を埋めるように山下の新曲が流れる。恩師ハネケンへの恩返しとも呼べる作品である。

 

2011年の『ちはやふる』は少女漫画原作のテレビアニメ。競技カルタに打ち込む少年少女の青春を描く作品だ。競技カルタは将棋や囲碁のように11で対戦する。派手なアクションはないが、知略を尽くした静かな心理戦が展開する。その緊張感を山下は小編成のオーケストラを使った繊細なサウンドで表現した。雄大なSFものやヒーローものの音楽とは対局的なアプローチで、これがみごとに効果を上げていた。まるで颯爽とした一陣の風のような音楽。人間ドラマからSFまで、さまざまなジャンルの作品を手がけてきた山下だからこそ作れた音楽だ。近年のアニメ音楽の収穫のひとつであり、それが生演奏で聴けるのが楽しみでたまらない。『ちはやふる』は多くのファンを得て、2013年に第2期が、2019年に第3期が放送された。もちろん、すべてのシリーズで山下康介が音楽を担当している。

 

●映像音楽への想いを受け継ぐ

こうして山下康介の仕事をふり返ってみると、今回のコンサートでは山下の音楽人生の中でも重要なポイントとなる作品が選ばれていることがわかる。山下康介の作曲家としての成長とキャリアを一望できるプログラムであり、映像音楽史を語る上でも聴き逃せない作品ばかり。山下康介の音楽には日本の映像音楽を築いてきた作曲家やミュージシャンの想いが受け継がれているのだ。コンサートという一期一会の機会にその想いを受け止め、未来につないでいきたい。

 

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Text by 腹巻猫(劇伴倶楽部)

音楽ライター。サウンドトラック・アルバムの構成・解説、映像音楽関連の執筆を中心に活動。著書に『スーパーアニソン作曲家 渡辺宙明大全』『日本懐かしアニソン大全』(辰巳出版)。